2022年02月21日

「前外し」について

ここから書くことは私個人の解釈と感想です。
ご自身が所属する連盟組織で規則を確認してからプレイしてくださいね。



審判をしていて最もよく聞かれる質問が

「前外しの牽制はボークですか?」

「はい、軸足を投手板の前に外すのはボークです」

と答えるようにしてます。

「でも・・・」

GIF 2022-02-21 2-28-47.gif

はい、これが「前外し」と呼ばれるボークです。ケンリー・ジャンセン投手が二塁走者にサインを盗まれるのを気にして「今からボークするよ!」自分でわざと軸足を投手板の前に外してボークをして走者を三塁へ進めました。


よくネットで見かけますが
◎◎連盟に質問したから
●●連盟の▲▲先輩が言ったから
いろいろな意見がありますが

22020701.jpg

公認野球規則書に書いてあることが全て、あの人が言った、この人から聞いたことよりも、規則書に書いてあることが全てだと私は思っています。

なので「前外し」がどの規則に当たるのか調べてみました。

22022102.jpg
まず「前外し」は先ほどの動画にありましたように投手板に触れている軸足を投手板の前に外す動作だと考えます。

そこで軸足の外し方の規則を探してみます。

5.07投手
(a)正規の投球姿勢
(2) セットポジション
投手は、打者に面して立ち、軸足を投手板に触れ、他の足を投手板の前方に置き、ボールを両手で身体の前方に保持して、完全に動作を静止したとき、セットポジションをとったとみなされる。
 この姿勢から、投手は、
 @ 打者に投球しても、塁に送球しても、軸足を投手板の後方(後方に限る)に外してもよい。

軸足を投手板の後方(後方に限る)に外してもよい。
ここにありました。

(a)正規の投球姿勢(2)セットポジション

これは野手から投手に、投手から野手になるための規則です。

セットポジション、軸足を投手板から外すと投手から野手になります。
そのときは軸足を投手板の後方に外そうね、という規則です。

しかし私達が「前外し」の規則を知りたいのは牽制球の時ですよね。

では牽制球の規則を探してみます。

5.07投手
(d) 塁に送球
投手が、準備動作を起こしてからでも、打者への投球動作を起こすまでなら、いつでも塁に送球することができるが、それに先立って、送球しようとする塁の方向へ、直接踏み出すことが必要である。
【原注】 投手は送球の前には、必ず足を踏み出さなければならない。スナップスロー(手首だけで送球すること)の後で、塁に向かって踏み出すようなことをすればボークとなる。
【注】 投手が投手板を外さずに一塁へ送球する場合、投手板上で軸足が踏みかわっても、その動作が一挙動であればさしつかえない。しかし、送球前に軸足を投手板の上でいったん踏みかえた後で送球すれば、軸足の投手板上の移行としてボークとなる。

牽制球の規則は(d)塁に送球です。ここを確認すると軸足を投手板から外す時の規則は見当たりません。

そうなんです。
投手板から軸足を外す規則は(a)正規の投球姿勢、つまりセットポジションについてしか規則がないんです。


ここまでがBaseballの規則です。



残念ながら日本の野球人口720万人の野球規則には【注】があります。

【注】は編者(日本野球規則委員会)が必要と認めた説明または適用上の解釈をいう

もう一度(a)正規の投球姿勢(2)セットポジションの【注】を探してみると【注5】にこんな規則があります。

【注5】 投手は走者が塁にいるとき、セットポジションをとってからでも、プレイの目的のためなら、自由に投手板を外すことができる。この場合、軸足は必ず投手板の後方に外さなければならず、側方または前方に外すことは許されない。投手が投手板を外せば、打者への投球はできないが、走者のいる塁には、ステップをせずに、スナップだけで送球することも、また送球のまねをすることも許される。

プレイの目的のためなら、自由に投手板を外すことができる。この場合、軸足は必ず投手板の後方に外さなければならず、側方または前方に外すことは許されない。


ここから追記を書き直します。


この【注5】は 投手板を外すことができる。

とありますので

投手板を外さないで塁への送球もできる。と解釈します。

【注5】でちょっとつまずきましたが、セットポジションをとってからでも投手板はいつでも外せるよ、という説明なのでしょう。



この一行の解釈が「前外し」なんだと思います。


(a)正規の投球姿勢】では投手から野手になるための外し方です

しかし【注5】で塁へ送球するプレイについて解釈を付け足しています。

でも(d)塁に送球の規則には投手板から軸足の外し方の規則はありません。

う〜〜ん【注5】が矛盾していますよね。。。。

とりあえず【注5】をいれてまとめてみると

プレイの(塁に送球する)目的のためなら軸足は必ず投手板の後方に外さなければならない

これが日本の野球規則の解釈になってしまうのだろうと私個人は考えます。




実際のグランドでは
プロ野球でも社会人でも「前外し」のボークはとりませんよね。
甲子園ではボークをとる方を昔はよく見ましたが最近はいませんね。
少年野球ではボークだ!という人もいますが試合ではとる方は見かけません。
前に外そうが横に外そうがどうしても許せないランナーにとって不利になることがあるのでしょうか?


日本では2016年にコリジョンルールが導入されて、捕手のブロックや走者のタックルという言葉を使わなくなりました。

2020年には5.07(a)(2)【注2】を書き換えて二段モーションの言葉も使わなくなりました。

次は「前外し」という日本だけの解釈5.07(a)(2)【注5】を削除してはどうでしょうか。

「前外し」という言葉を使わない方向に進むことを私個人としては望んでいます。


牽制球の規則は
(d)塁に送球 送球しようとする塁の方向へ直接踏み出す
Baseballはこの規則だけです。




ここからも付け足します。

投手規則の目次だけを書き出してみます。

5.07 投手
(a) 正規の投球姿勢       ←軸足の外し方  
  (1) ワインドアップポジション
  (2) セットポジション     
(b) 準備投球
(c) 投手の遅延行為
(d) 塁に送球
(e) 軸足を外したとき
(f) 両手投げ投手

軸足の外し方が書いてあるのは(a)正規の投球姿勢だけになります。
投手から野手になるには
軸足を投手板の後方に外す
切り替えスイッチが軸足と投手板の関係ですね。
22022202.jpg
まとめると前外しはやはりこの動画ですね。

GIF 2022-02-21 2-28-47.gif

靴ひもを結び直したくて球審にタイムを告げる時に軸足を前に外してから歩き出した。

投手板の後ろにあるロージンパックに触りたくて自由な足から歩き出し先に軸足を外さなかった。

こんなケースもありました。




posted by metoo at 02:58| 千葉 | Comment(4) | 規則 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「前外し」「横外し」などは存在しませんよ。
「プレート上からの牽制」で「一挙動での投手板上での軸足が踏みかわり」が前あるいは横にずれているだけです。
これを「前外し」「横外し」とか解釈する人がいるからややこしくなるんです(プロはいいとか…実際プロはそのずれ量をかなりの範囲許容していますが)。
あくまでプレートは後方しか外せません。なので「前外し」「横外し」のことは書いてありません。
Posted by GP at 2022年02月21日 10:31
GPさん、ご無沙汰しております。
コメントありがとうございます。

本文でも書きましたが私は規則書に書いてあることが全てだと思っています。

(d)【注】一挙動の部分は仰る通り、軸足の外し方についてはどこにも書いてありません。この(d)【注】も早めに削除してもらいたい項目の一つです。

>あくまでプレートは後方しか外せません。「前外し」「横外し」のことは書いてありません。

GPさんの解釈は書いていないですが
【注5】プレイの目的のためなら、自由に投手板を外すことができる。この場合、軸足は必ず投手板の後方に外さなければならず、側方または前方に外すことは許されない。

と規則書には書いてあります。
この【注5】が投球姿勢の規則ですが「プレイの目的」とありますので、プレイのなかには塁への送球も含まれていると解釈してます。
この項目につてはどうお考えでしょうか。
Posted by metoo at 2022年02月21日 11:27
>(d)【注】軸足の外し方
外さない(プレート上からの)牽制のことなのでそもそも外すという考えはないと解釈しています。

>「プレイの目的」
もちろん塁への送球もそうですし、送球せず偽投もあるでしょう。
飛び出した走者をアウトにすることなど、セットした後に様々なことが起きた時にプレート後方に軸足を外さないとセットは解けないということでえす。
Posted by GP at 2022年02月21日 11:36
GPさん、ありがとうございます。

>そもそも外すという考えはない
なるほど、分かりやすい解釈ですね。

>「プレイの目的」
そうかこの部分は、外さなければいけないではなく、外すことができるですから、外さないで塁に送球することもできる、外す時は後方に、ということなんですね。



Posted by metoo at 2022年02月21日 12:08
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